子育てで完璧を目指すほど自分を好きになれないあなたへ 完璧主義が自己肯定感を下げるメカニズムと「不完全な私」を認める方法
子育ては、喜びも大きい一方で、予想外のことの連続であり、思い通りにいかないことの方が多いと感じるかもしれません。一生懸命取り組むほど、「もっとこうするべきだった」「あの時ああしていれば」と、自分自身に厳しくなってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
完璧を目指し、努力を重ねることは素晴らしいことですが、もしその完璧主義が、自分を否定し、自己肯定感を下げてしまっているのだとしたら、少し立ち止まって考えてみる必要があるかもしれません。完璧な母親であろうとするほど、なぜ自分を好きでいられなくなってしまうのでしょうか。
なぜ子育て完璧主義は自己肯定感を下げやすいのか
子育てにおける完璧主義が自己肯定感を下げてしまうのには、いくつかの心理的なメカニズムが関係しています。
「べき思考」が生む達成不可能な目標
完璧主義の根底には、「こうあるべき」「〜ねばならない」といった強い「べき思考」があります。子育てにおいては、「いつも笑顔でいるべき」「手作りの食事を与えるべき」「どんな時も冷静に対応すべき」といった理想像を設定しがちです。
しかし、子育てには予測不能な要素が多く、これらの理想を常に100%達成することは現実的ではありません。目標が高すぎると、少しでも外れるたびに「できていない」「自分はダメだ」と自己否定に繋がりやすくなります。達成感よりも、「まだ足りない」という不足感や罪悪感を感じやすくなり、これが自己肯定感を蝕んでいくのです。
失敗を恐れ、挑戦や学びの機会を逃す
完璧主義者は、失敗を極度に恐れる傾向があります。「完璧にできないなら、やらない方がましだ」と考えてしまい、新しい方法を試したり、慣れないことに挑戦したりすることを避けることがあります。
しかし、子育てにおける成長は、試行錯誤や失敗から学ぶ過程でもあります。失敗を避けてしまうと、成功体験やそこから得られる「自分はできる」という感覚が得にくくなります。また、失敗を経験して立ち直ることで培われるレジリエンス（精神的回復力）も育みにくくなり、結果的に自信が持てず、自己肯定感が低くなる可能性があります。
他者との比較による劣等感
現代はSNSなどで他者の「完璧に見える」育児や生活が目に入りやすい時代です。「他のママは effortlessly（無理なく）完璧にやっているのに、なぜ私はこんなに大変なのだろう」と、自分と比較して落ち込んでしまうことがあります。
多くの場合、SNSなどに投稿されるのは生活のごく一部であり、その裏にある苦労や大変さは見えません。にもかかわらず、キラキラした部分だけを見て自分と比較し、「自分は劣っている」と感じてしまうことが、自己肯定感をさらに低下させます。
不完全な自分を受け入れられない自己否定
完璧主義者は、自分の欠点や弱点を受け入れることが苦手な傾向があります。「完璧でない自分には価値がない」と考えてしまうため、少しでも至らない点があると、強く自分を責めてしまいます。
子育て中は、時間や体力の制約から、思うように家事ができなかったり、子どもに優しく接することができなかったりすることもあるでしょう。こうした「不完全さ」を受け入れられず、「こんな自分は母親失格だ」と自己否定を繰り返すことが、自己肯定感を深く傷つけます。
「不完全な私」を認め、自己肯定感を育むためのステップ
完璧主義を手放し、「不完全な私」でも大丈夫だと思えるようになることは、自己肯定感を育む上で非常に重要です。ここでは、具体的なステップや考え方の転換をご紹介します。
ステップ1：「べき思考」に気づき、緩める
まずは、自分がどんな「べき思考」を持っているかに気づくことから始めましょう。「〜すべき」「〜ねばならない」といった言葉が頭に浮かんだら、「本当にそうかな？」「少し緩めても良いんじゃないか？」と自問してみてください。
例えば、「食事は全て手作りであるべき」と思っているなら、「市販品や冷凍食品を使っても、子どもが栄養を摂れていれば大丈夫」「時には息抜きも必要」と考えてみるのです。「完璧」ではなく、「ベター」や「まぁ、いっか」を目指す意識を持つことが大切です。
ステップ2：「小さな成功」を見つけ、「できたこと」に焦点を当てる
完璧を目指すのではなく、日常の中の「小さな成功」や「できたこと」に意識を向けてみましょう。
- 今日の目標は全てこなせなかったけれど、子どもを笑顔にできた瞬間があった。
- 部屋は散らかっているけれど、一緒に絵本を読む時間を持てた。
- 自分自身の休息のために、5分だけぼーっとする時間を作れた。
リストアップしてみるのも良い方法です。完璧ではない自分を責めるのではなく、「大変な中でも、これだけはできた」と自分を認めてあげる練習をすることで、自己肯定感は少しずつ育まれます。
ステップ3：自分への「心の声」を優しくする
自分を責める厳しい「心の声」に気づき、意識的に優しい言葉を自分にかけてみましょう。例えば、「なんでこんなこともできないの」と思った時に、「大丈夫、誰にだってうまくいかない時はあるよ」「疲れているんだね、少し休もう」と、親しい友人にかけるような言葉で自分を励ましてみてください。
セルフ・コンパッション（自分への思いやり）を意識することで、失敗や困難な状況でも自分を責めすぎず、穏やかに受け止めることができるようになります。
ステップ4：不完全さを受け入れ、助けを求める勇気を持つ
「完璧でなければならない」という思い込みは、「一人で全て抱え込まなければならない」という孤立感に繋がりやすいです。しかし、子育ては一人で完璧にこなせるものではありません。
不完全な自分を見せること、弱みを見せることに恐れず、パートナーや家族、友人、地域のサポートなどに「助けてほしい」と伝えてみましょう。誰かを頼ることは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ自分を大切にするための、そして関係性を築くための重要なステップです。助けを受け入れることで、自分自身の負担が減り、心の余裕が生まれます。また、不完全な自分を受け入れてもらえる経験は、自己肯定感を高めることに繋がります。
ステップ5：他者との比較をやめ、自分自身の価値基準を大切にする
SNSを見る時間を減らしたり、他者と比較して落ち込んだ時に意識的に情報を遮断したりする工夫も有効です。そして、「私にとって大切にしたい子育てとは何か」「どんな母親でありたいか」という自分自身の価値基準を明確にしてみましょう。
他者の基準ではなく、自分自身の基準で子育てや自分自身を評価することで、外部からの影響を受けにくくなり、自己肯定感を守ることができます。
完璧主義を手放すことは、自分自身と子どもへの贈り物
子育てにおける完璧主義を手放し、「不完全な私」を認めることは、自分自身の心の健康を守るだけでなく、子どもにも良い影響を与えます。親が自分の不完全さを受け入れている姿を見せることは、子どもが「自分も完璧でなくても大丈夫だ」と感じ、安心して自己肯定感を育むことに繋がります。
完璧な母親を目指すのではなく、幸せな母親を目指しましょう。大変な時も、うまくいかない時も、自分自身に優しく、ありのままの自分を受け入れてあげてください。その小さな一歩が、子育てをもっと楽に、もっと愛おしいものにしてくれるはずです。